業務自動化
卸売の受発注を自動化する前に、注文を1本の台帳にまとめる話

卸売の受発注を自動化するとき、私は読み取りツールの選定から始めません。先に、注文を1本にまとめる台帳を置きます。
入口が3つある会社では、注文はどこにも揃っていない
卸売の受発注で詰まっているのは、注文の量ではなく、注文がどこにも1つにまとまっていないことです。
FAXはトレイ、電話は手書きのメモ、メールは担当者それぞれの受信箱にあります。事務の方はその3つを順番に見ながら、販売管理システムに入力していきます。3つ全部を見た人の頭の中で、はじめて「今日の注文」が完成します。
台帳は、机の上ではなく人の頭の中にあります。
その人が休んだ日は、全体像を持っている人が社内にいなくなります。残った人は、トレイと受信箱とメモを、ゼロから集め直すことになります。
締めの時間が、会社の実力より先に決まってしまう
この形のままだと、受注の締め時刻は、事務が入力し切れる時間で決まります。倉庫の能力や配送ルートの都合では決まりません。
たとえば11時に締めるのは、そこから積み込みと配車に回すためです。締めの直前に電話で入った追加が入力に間に合わず、次便に回る。取引先には「締めに間に合いませんでした」と伝えることになります。注文は届いていて、社内で追いつけなかっただけです。
締めが早いのではなく、入力の手前で毎朝渋滞が起きている。私はそう見ています。
卸売の朝を、そのまま並べてみる
次の図は、業務用食品の卸で、台帳を置く前と後の朝の流れを並べた一般的な例です。
業務用食品の卸|取引先の飲食店からFAX・電話・メールで注文が届く会社(受注担当2名)の場合
これまで
台帳を1つ置いたあと
※ 取引先数や注文様式による一般的な例です。実際にどこが縮むかは、業務を拝見してからお見せします。
台帳の形を先に決める。道具を選ぶのはそのあと
卸売の会社で私たちが最初に見るのは、販売管理システムに入る手前に、注文を受け止める台帳を1枚置けるかどうかです。FAXの読み取り精度は、その次に来ます。
列は、受信日時、入口(FAX・電話・メール)、取引先、品番、数量、納品日、そして確認済みかどうかの7つです。これが並んでいれば、入口が何本あっても、注文は1本に見えます。自動化は、この台帳に行を立てる作業から順に置き換えていきます。読み取りも、メールの取り込みも、行き先が決まってはじめて意味が出てきます。
今の販売管理システムは入れ替えません。台帳は基幹の代わりではなく、基幹に入る前の受け皿です。
電話の注文は、最後まで人が受けます
3つの入口のうち、電話はいちばん最後まで人が受ける部分です。「いつものやつ、10ケース」で通じる関係は卸の強みなので、機械に置き換えるつもりはありません。
変えるのは、受けたあとです。メモ用紙に書いて後から入力するのをやめ、聞きながら台帳へ直接入れる。それだけで、突き合わせの工程がひとつ消えます。
「この品番、いま在庫ある?」という問い合わせも似た形です。答えられるのがベテラン1人という状態は、過去の対応を材料にして回答の下書きを出せるようにすると、だいぶ薄まります。最後に何と答えるかは、人が決めます。
何を測るところから始めるか
ご相談をいただいたとき、最初にお願いするのはツールの選定ではなく計測です。一週間だけ、入口ごとの注文件数、締めのあとに入った注文の件数、入力の手直しが出た件数の3つをメモしてもらいます。
入口ごとの件数と手直しの件数を並べると、どこから手を付けるかが決まります。
研修をご希望の場合も同じ考え方です。一律の座学より、受注に関わる方が自社の注文書と自社の品番で触ったほうが、あとに残ります。
締めの時刻は、動かせる
入力の手前で渋滞しなくなれば、締めの時刻は動かせます。11時締めは社内の事情で、取引先から見れば「11時までに言えばいい」という約束でしかありません。
締めを30分うしろにずらせるかどうかは、値段の話をしないで済む営業の材料になります。同業と並んだとき、そこで選ばれることは珍しくありません。
注文が3つの入口から来ること自体は、変えなくていいと思っています。相手のやりやすい方法で頼めるのは、卸の強みです。もったいないのは、その強みを受け止めるために、事務所が毎朝3回、同じ確認をしていることです。
入口は3つのままでいい。台帳が1つなら。
よくある質問
Q. 卸売の受発注を自動化するには、何から手を付ければいいですか?
ツールの選定より先に、注文を受け止める受注台帳を1つ置くところからです。受信日時・入口・取引先・品番・数量・納品日・確認済みかどうかの7項目があれば、FAX・電話・メールと入口が分かれていても1本に見えます。自動化は、その台帳に行を立てる作業から順に置き換えていきます。
Q. 電話で入る注文も自動化できますか?
電話は3つの入口のうち、最後まで人が受ける部分です。「いつものやつを10ケース」で通じる関係は卸売の強みなので、そこを機械に置き換える話にはしません。変えるのは受けたあとで、メモ用紙に書いて後から入力するのをやめ、受けながら台帳へ直接入れる形にすると、突き合わせの工程が1つ減ります。
Q. 今使っている販売管理システムは、入れ替えが必要ですか?
入れ替えは前提にしません。今の基幹システムやExcelはそのまま使い、その手前にある手作業(FAXの読み取りと転記、3つの入口の突き合わせ)を減らす形で組みます。台帳は基幹システムの代わりではなく、基幹に入る前の受け皿として置きます。
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